3月11日
3年が過ぎた。
あの日、
被災した舞子浜病院前の海は、
何事もなかったように、
青く輝く。
いまもなお、
仮設暮らしの生活がつづき、
よほど張り詰めていたのだろう。
喪ったものごとの大きさから、
いまになって、
はじめて心身の異常を来たす方々も多い。
外勤の帰りに
久ノ浜に立ち寄ると、
鎮魂の花火が行われていた。
まだまだ寒い海風の夕暮れ、
地元の小学生なのだろうか。
子どもたちが、
津波被害に遭ったむき出しの土地で、
花火が打ちあがるたびに、
歓声をあげる。
まずは大人たちの用意した、手作りの仕掛け花火だ。
月と、木星、星々がすべての様子を見守っている。
想像を超える苦しみに見舞われた土地で、
しかし子供たちの歓声が澄み切っていて、
ちょうど打ち上げ花火の残像のように
耳に残った。
「ありがとうございました」
最後の花火が打ち上げ終わると、
護岸に陣取る花火師たちに、
お礼を述べる。
頼もしい声だ。
希望という言葉をやすやすと使うつもりはないが、
このいわきの地が、
子どもたちの成長を見守り続けられる場所であることだけは、
失いたくない。