フクシマとオキナワ~その2
名護市辺野古地区の県道から砂利道へ入り、
ゆきどまりから延々と歩いて獣道を下り切ると、
「じんぶん学校」はある。
震災後、いわき市から沖縄へ避難された家族を描いた映画が縁で、
巡り合った場所である。
ちょうどこの日は、いまも同じくいわき市から沖縄へ避難中の、
少年もいっしょに泊まることになった。
誰もいない浜へ飛び出すと、
右手奥にキャンプシュワブを望む、大浦湾のリーフが広がる。
潮騒に、夕陽が溶け込む時間帯だった。
「ごはんつくりますよー」
と子供たちが呼びにきてくれ、
カマドに集合。
電気もガスもない、この場所では、
薪を集め、火を起こし、一から晩餐をこしらえる。
今日のメニューは「ゆしどうふ」
豆乳をしぼり、釜に海水を加えると、
一息に煮立つ。
おからは浜に自生する食草と合わせ、
揚げ団子にする。
「じんぶん学校」先輩たちに教えられ、
ようやく夕食。
時間を解き放ち、潮風のなかでいただく食事は格別だ。
3泊4日の「じんぶん学校コース」では、
鳥一羽を皆で潰し、供するという。
初めは泣き出す子供もいるが、
最終日には両手を合わせ、
食べて自ら後片付けをする。
そんな話をスタッフから聞いた。
電気もガスもない生活。
もちろんこれは象徴であり、
私たちはもう後戻りができようがない。
それはとても恐ろしいことなのかもしれない。
子供たちの笑顔に包まれながら、
この世界の100年後を思い、
そう感じた。
ちょうど大潮の新月で、
まったくの闇に星は無数だ。
少年とともに、夜の漁に出る。
「いざり」という沖縄に伝わる漁は、
深夜干潮で現れたリーフを歩き、
獲物を探す。
いたいた!
「アジケー」
これはおいしいと
翌朝、
少女がよろこぶ。
さすがうちなーんちゅ。
たくましい。
潮のかおりそのものの、
かなりハードな味なんだけどね。
帰り際、少女がさっと道端の草木を結わえ、
お別れのブーケを作ってくれる。
うれしかった。
かなり久しぶりに子供に戻り、
笑った気がする。
いつか不自然な日常に苦労する子供たちとともに、
もう一度この場所を訪れたいと思った。
フクシマとオキナワ。
ご縁に感謝し、
それぞれの現実に
向き合ってゆければと思う。