初サイクリング
初夏の風につられ、
念願のアシスト付自転車を手に入れた。
試してみると、
小学校のとき苦労したお城山の急坂も押さずに上れた。
平橋を渡り、
蛙なく田植え直後の田園を抜け、
これまた行きたかった神谷の回廊美術館。
龍の背を模した回廊が斜面を駆け上り、
子供たちが描いた桜の絵の数々が、
葉桜のいまも回廊に花を咲かせている。
ボランティアの方々が全身に汗して、
建築をつづけていた。
樹上の家。
風が通る。
ぶらんこも何十年ぶりだろう。
空飛ぶ感じ。
この麓をこれから100年かけて
99000本の桜並木で埋め尽くすという。
震災後、
負の遺産ばかりに負けじとする発想力だ。
調子に乗り
新舞子から
薄磯に出た。
被災した集落は跡形もなく、
堤防工事が進められていた。
観光客にまざり、
生まれて初めて塩谷崎灯台、通称「豊間の灯台」にのぼる。
灯台から薄磯を見下ろす。
集落は失われても、海の青みは変わらない。
中学生のとき、夏休みは毎日通い、
泳ぎを競い合った海だ。
海の家や、テントに連泊しての、家出生活。
独り立ちへのはじまりだった。
初夏の風を満喫したが、
海を背にすぐ
まさか突然のバッテリー切れ。
う~ん37㎞は大丈夫と取扱書にはあったのだが、
城山とか、弁天様とか調子こいて上ったからか、
20㎞くらいで切れてしまった。
帰りの道は高久を通る、
友と自転車も競い合った農道なのだが、
アシストなしは泣きそうになるほど、
きつかった。
尻はごつごつ。
足はパンパン。
筋肉痛。
やれやれ。
それでも意地でも
年齢には負けじと
のぼり坂を降りては押さなかったけれど。