不登校に関する講演

11月、12月と相次いで、不登校に関する講演を拝聴する機会にめぐまれました。
    
ひとつめは、いわきにおける不登校児支援の草分け的存在である「たけのこの会」が呼んでくださった、
学習院大学教授、滝川一廣氏による講演。
氏は、不登校という単語の歴史や、社会的背景を十分に踏まえたうえで、
学校を休む意味をいかにして積極的にとらえることができるかを伝えられ、
「休んでいる間をどうすごすか」を重要なテーマとされました。
同感です。
無理に登校を促すことではなく、
行きたくても行けないのか、行くことに意味を感じないのか、
行くことが苦しくて、身体が拒絶反応を起こしているのか。
こうした話を進めながら、
もし行けないとしたら、
休んでいる間を、どのように過ごしてゆけるのか。
治療は、こうしたテーマをともに考え、
実践してゆくための、プロセスそのものです。
     
ふたつめは、「ひきこもり」の研究から多岐にわたる著書において
現在も活発に発言されている、筑波大学社会保健学教授、斉藤環氏の講演。
こちらは、いわき市保健所が呼んでくださり、いわきでの講演が実現しました。
氏は、不登校ならびにひきこもりに苦しまれる家族に向けて、
本人が安心してひきこもれる(不登校を受容できる)関係づくりを推奨するとして、
「北風より太陽」の関係、覚悟と根気、信じて待つことの重要性を話されました。
会話、親子のコミュニケーション、相互性の回復を第一に、
という氏の趣旨にはおおいに共感でき、
まずは「家庭において笑顔が出ること」を第一目標とする、私の臨床感とも一致します。
不登校にせよ、ひきこもりにせよ、苦しんでいるのは、当の本人です。
ひとは、理解、共感されることにより、苦しみが和らぐものです。
そうして笑顔と生命力が回復したら、次の段階に進めばよいのです。
そんなことを再確認しながら、
氏の、明晰でかつ底辺に温かみの溢れるお話を拝聴しました。
     
昼休みには、保健所長とともに、斉藤環先生と、
震災後のいわきの現状を、少しだけお話する機会にめぐまれました。
2年半が過ぎたとはいえ、まだまだ避難生活の継続による諸問題
(このなかには不登校の問題も含まれます)が、解決したとは言い切れません。
サテライト校が開設されるなど、しかしその回復途上のさなかで、希望もあります。
今後とも、少しでも、前に進んで行ければと思います。
   
滝川一廣先生とは、懇親会でもごいっしょでき、
学校の在り方や、個人個人の回復への熱い思いについて、
大いに語り合うことができました。
先生が、いわきの地酒をたくさん召し上がってくださり、
地元の人間としては、うれしい限り。
お強くて、驚きました。
重ね重ね、ありがとうございます。
   
それでは来年も、
いわきに多くの先生方が来て下さり、
少しずつでも、
よき年となりますように。

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