3.11から9年のときを経て
震災から9年目を目前にした3月7日
TBSの友人が監修している「報道特集」という番組を
福島第一原子力発電所に程近い
双葉駅から中継するということで
自分も同行させていただいた。
双葉駅は3月4日に
すぐ南に位置する大熊町の大野駅は3月6日に
それぞれ避難指示が解除されたばかり。
オープンしたばかりの近代的な駅舎の隣には
あえてあの日14時46分に停止したままの
駅の時計も据え置かれていた。
駅前の商店街は9年という時間をそのままとどめたままで
自動販売機も「たいやき」屋さんの店内も荒れたまま。
ひとまず3月14日の常磐線の再開通に向け
駅だけは整備され避難指示も解除されたが
真新しい駅とのギャップには複雑な思いがする。
桜の名所である夜ノ森駅にも行ってみたかったのだが
こちらは3月10日に避難指示が解除されるということで
震災後何度も訪れたゲートはまだ閉じたまま。
かつて取材した富岡の小学校も
靴や教材や子どもたちが描いた絵などはそのままで
こちらも9年という歳月を閉じ込めたままだった。
ふと
誰もいないはずの双葉駅のホームから
「列車がまいります」とアナウンスが聞こえ
気づけば開通前の常磐線が
どうしてだか
向こうから走ってくるではないか。
3月14日の再開通に向け
試運転をしているとのこと。
あの日から
9年を経て
ようやくいわきから仙台までの浜街道がつながることは
やはりうれしい。
4年前に上梓した拙著にも
再開通を待ちわびる物語を記したが
いよいよその日が来たということだ。
リハーサルを終え
日が暮れかかるころ
中継がはじまった。
金平キャスターが
手書きのメモから抜粋された
熱い言葉でこの街のいまを伝えてくださる。
言葉のちから
報道のちから
夜気が冷え込んできても
一言一言に込められた思いに
ジーンとくるものがある。
街にまだ人はなくとも
まずは灯りがともされなければ
何もはじまらないのだ。
途中
先に避難指示が解除された富岡町にできた
ショッピングモール「さくらモールとみおか」で
頂いたラーメン「浜鶏(はまど~り)」はうまかった。
モールには買い物するお客さんが集い
この春には
これまで3分の1の部分しか解除されていなかった
夜ノ森のさくら並木もすべて立ち入りが可能となる。
人は過去とともに生きざるを得ない稀有な生命体だが
それでも前を向いてゆきたい。
あの日から9年を経て
次の1年
次の1日
もちろん過去を重んじつつも
少しでも先に進んでゆきたい。